下北沢店/あなたにとって本当に必要なもの
人には出来ること出来ないことがあって、持っているもの持っていないものがあります。どっちがいいとか悪いとかではなくて、ただ、そうあるだけです。それなのに、そもそも前提となる条件が違う人と自分を比べて落ち込んだり、羨んだりすることがある。考えてみればあまり建設的ではないですよね。けれど悩みの多くは、自と他との比較によって生まれています。
そこから派生して、自分自身の本来の望みや目的から逸れてしまって、もう何を悩んでいるのか、自分が何をしたかったかも分からないとおっしゃる方も多くいらっしゃいます。
例えば、とある女性の話です。
自分にはさっぱり恋人が出来ないのに、外見が優れている友人にはひっきりなしに相手が現れ、恋人が絶えない。
そんな状況を前にして、
「見た目が良いと異性に好かれる」
と心の中にメモした彼女は、早速ダイエットやメイクの勉強、おしゃれに時間やお金を費やすようになりました。
次第にそのメモが、
「外見が良くないと異性に好かれない」
と書き換えられた頃には、外見を磨くことへの限界や、恋人ができない事への焦りを感じ始め、
「外見が良くなきゃダメ」
「異性に好かれなきゃダメ」
そう書き加えられた時には、美しい女性に対する嫉妬、美しさを求める男性達への怒りや憤りで胸がいっぱいでした。
最終的に、自己肯定感というものをすっかり失った彼女の心には
「外見も良くなく異性にも好かれない私には価値がない」
と書かれた真っ黒なメモだけが残りました。
そろそろ彼氏が欲しいなとか、愛し、愛されたいなとか、ごくごくありふれた思いが発端でした。人と自分の状況を比べたことによって、自分の持っていないものにばかり目が行ってしまった。それを手に入れることに目的がすり替わってしまったのです。
もちろん人と切磋琢磨して、成長することも必要です。他人が存在するからこその自分で、評価されることで自分がどういう人間であるか、どういう人間なりたいのかを考えるための指標にもなります。
良い変化をもたらすのであれば、自分を磨くのも大切なことですが、必要以上に自分を曲げること、否定することになるのであれば、果たしてそれは、本当に自分が求めている変化なのか?自分にとって必要な変化なのか?
一度立ち止まって考えてみる必要があるかもしれません。
あなたにとって本当に必要なことは、決して自分以外の何者かになろうとしないことです。
小野口憂香